一歩前進―45(61―ST射撃時の恐怖)

 FTRパイロットとしていろんな角度から恐怖を感じ危険と対峙しながら飛行続けてきた。
 T−33の飛行時はSPINが怖かったが空実団で体験してからは動きがわかり手順をすることにより回復できることを確認してからは、恐怖はなくなった。
 危険状態を正しく認識できないと死が待っている。状況を正しく認識しそれにあった手順をする者のみが生還する。
 第1回目は、空対地射爆撃訓練のため八戸基地移動訓練(天ヶ森射場)をしたときのことで、課目はST:緩降下射爆撃の実射の時である。まだTRで先輩から絞られる毎日を送っていた。飛行隊の雰囲気や訓練にもなれたため、いままでのばしていなかった髪を伸ばし揚々としていた。
 その日は、資格取得のための大切なミッションであり、RXとSTの最後の機会であった。RXを全弾発射し1級の資格を得た。次は、STのパスに入った。
 はじめは、DRYパス、2〜3パスはおおむねの直弾を得ていた。最終パスにはまだ多めの残弾が予測され、若干のロングバーストが必要と考えていた。パターンの飛行もやや乱れ、編隊長やレンジオフィサーから助言を得ながらの飛行となっていた。
 HOTの最後のパスだった。あまりいいトラッキングでわなかったためTGTを注視してしまった。この時である。・・・
 額から汗がヘルメットごしに髪をつたい目に入った。一瞬とまどった、地上が近づき間一髪でOFF操作したが最低距離1600フィートをきり危なく地上にぶつかりそうになった。
 OFF操作は、遅れ、操作時OVER G、6G着陸後がっちり絞られた。
 勿論、「汗が目に入りました」とは言えず、胸をなぜおろした。
 この日すぐ髪を切った。その後、退官するまで髪はのばさなかった。