一歩前進−01

1 夢と理想
 平成10年7月5日、この日、私は55歳の誕生日を迎え、航空自衛隊を去った。 北海道夕張市の山奥、今はなき夕張南高等学校を卒業、家族と別れ18年間過ごしたふるさとを後にした。
 昭和37年3月13日、航空自衛隊公募空士57期として熊谷基地第2教育群に入隊した。
 昭和38年3月15日、航空学生19期生として、当時芦屋基地にあった幹部候補生学校芦屋訓練隊に入校した。
 以後、航空自衛隊の戦闘機パイロットとしての生活が始まった。大空を目指し、空で青春をすごし、ロマンを追い続け、一つの満足感と目標を達成した。
 その時々に、エースをねらい、テストパイロット。作戦幕僚そして指揮官・教官として隊員の指導を行ってきた。
 主として、人・物。運用に携わり、身を危機管理・不測事態対処の場においた経験、自衛隊勤務の経験を元に自分なりの「生き様」「不測事態に対する考え方」「操縦者としての考え方」「指揮・管理」「隊員の指導監督」等について考えてみたい。
 第一回目は、「夢と理想」について考えてみたい。
 小学校の頃から「空」にあこがれ、高校時代には、それが国防という意識の中から「戦闘機」と言う物に焦点を合わせ努力の方向が現実に相容れるよう勉強する事になる。だだ、この考え方の原点は、父の仕事すなわち警察官と言う職業に大きく影響し当初は、法律の勉強をして警察官になりたかった。しかし、身長が足りない理由で不合格となってからは、方向転換せざるをえなくなり、当時としては、社会的地位の最も低い自衛官への道(勿論、現在も自衛隊の社会的地位は、引き続き低いが)を選んだのである。
 一般隊員であった頃は、時代背景もあり比較的気楽に過ごしてきたが、さすが、航空学生に入校してからは、大変な物であった。高校時代に、これだけの努力をしていたならば国立大学は合格していたかもしれない。
 自分では、退官するまで人一倍努力したつもりで居るし、悔いはない。
 それは、いつまでも「夢と理想」を追い続けたからかもしれない。
 歌の文句ではないが 男は、夢を見ろ」である。辞書によると
 ○ 夢  :理想的な状態にあこがれぼんやりとした様
 ○理 想 :物事の最も望ましい状態、ユートピア
 実現できるよう努力すること、それが一生の物であれば、男冥利に尽きると思う




2 人間の頭の善し悪し 
 日々、進歩向上を考える上で注目すべきは自らを如何に生かすである。
 あいつは、「頭がいい」「才能がある」と言って物事をかたづけてしまう人が多いが、人間の頭の善し悪し」「才能の差」などは、そんなに多くはない。
 差が出るのは、その経験を如何に生かすか、経験から何を学び取るかである。
 失敗したらその原因は何だろう?原因を分析しどう改めるかである。
 成功しても同様である。ただ喜んでいてはだめ、成功の原因を検討し、必勝パターン・得意技を編み出していくのである。
 この様に、意識的に自分から学び取る姿勢を続ければ進歩の度合いがグンと違ってくる。そのためには、自己管理の中で行動体験をチェックし、分析する時間をもうけることが大切である。自己評価項目を選定する能力を育て、内的・外的要因を分析出来る自己管理能力を日頃から養い続けなければならない。「電車の中」「車の中」で。
 所謂、これが危機管理能力の向上にも役立つのである。
 後に、危機管理能力にについては、述べるとして、日々の行動、生活の中で自分がなすべき内容のあらゆる分野について、企画(計画)・行動・分析パターンそして実行中における対処要領を自分の経験や能力の中で考え続けなければならない。
 そうすれば、秀でる能力があらゆる場面で向上が見られるであろう。
「座に安住せず、飛躍」こそが人生である。