一歩前進―41(62 ACM時の恐怖・・・秘術{木の葉替えし)

 2機編隊長として自他ともに実力を認められていたS45の夏の頃、1vs1の空中戦等訓練(ACM)を行うため若い後輩と金華山沖の空域に向かった。
 ACMには自信があり少しばかり天狗になっていた時期であった。
 横の旋回よりも縦系の技を多用しそれを得意としていた。(俗に言う木の葉替えし・・・F86Fでも可能であった。)
 後輩のトラッキングの練習も兼ね最終段階の状況を模擬させていた。
 当時、「木の葉おとし」を秘術として使っていた。これを教えてくれた先輩は転勤していたので飛行隊では私だけが使える技だった。 
上昇角70〜80度頂点での速度200〜230ノットラダー・スティックを交互に使うと機首は下がらず平行に移動する。上昇降下を2度ほど続けると完全に射撃態勢に入ることができる。これに、太陽や雲、背景を利用すると相手は完全にロスト(相手を見失う)する。
 なかなかよくついてくるので太陽を活用し上昇中太陽と私が一線になるように飛行した。
 そのうち彼は、飛行機の腹を見せながら私の飛行予想位置に飛び始めた。
 一瞬舵を緩めたため速度を切り速度が150ノット以下にまで減速してしまった。逃げ場を失ってしまった私は衝突を覚悟し旋回外側に反転離脱した。もしぶつかったらベイルアウトと思い左手はトリガーにあてた。
 約2秒後後輩機はスピンに入り反転していた。
 「ハンドオフ」と指示した。飛行機は安定しリカバリーした。
 この技を引き継ぐ後輩は、いなかった。