一歩前進−30 空間識失調(バーティゴ)

 前回、バーティゴ・シミュレーターについて述べたが、次ぎに掲げる飛行中に起きる錯覚を模擬し操縦者に認識させる目的に作られた。
空間識失調についての分類は、8〜10項目程度になると思われるが、情報源を基にするのが一番わかりやすい。
 ①視覚情報
 ②平衡感覚
 ③体性感覚が挙げられる。
視覚情報については、夜、星をじっと見つめていると動いて見えたり、雲中では太陽が直上にあると言ったようなもの。
平衡感覚については、三半規管の反応時間の遅れ等に起因するもの、あるいは、少し異なるがリーン・コレオリー効果によるもの。
体性感覚については、重力とGの変化が区別できない事から来るもので、バンク角にも大きく影響する。
要因として、ストレス・二日酔い・睡眠不足・疲労・不安等が挙げられる。従ってパイロットは、摂生と自己管理人並み以上の体力増強が必要となる。
飛行中の全ての環境の中で空間識失調は、「当然の生理的反応」であり「自覚がなく」「脱却が困難」なものである。これに陥った場合、精神的・肉体的に想像できない苦痛が生ずる。脱却するには、
 ①計器を信頼し
 ②他のパイロットに知らせ
 ③頭を動かさない
 ④水平定常飛行を行う事である。
これが出来ないパイロットは、「死」に到る事が多い。
バーティゴは、決してパイロットの恥ではなく、認識し、回復処置を速やかに実施することである。
結果、「トップガン」「ベストガイ」の映画のワンシーンと同様です。